天敵御曹司は政略妻を滾る本能で愛し貫く
私が今一番伝えたいことを、今、ちゃんと口にしなければならない。前に進むために。
「命を救う立場なのであれば、どうか、優弦さんの思いを今一度考え直してください。お願いします……」
私は、すべてのプライドやしがらみを捨てて、深々と頭を下げた。
その場にいる誰もが息を潜めているのが分かる。
優弦さんがそっと肩を抱いて体を起こそうとしてくれたけれど、私は頭を下げることを止めなかった。
「私は、祖母を差別したあなたを一生許すことはできません。けれど、この家には変わってほしいと思います」
「な、何を……」
「変わっていくことを受け入れなさいという祖母の教えを、せめて守られたら……っ」
後半の言葉は、ほとんど震えてしまっていた。
おばあちゃま。もう二度と会うことは叶わないけれど、今の私の判断は間違っていないと、そう思ってくれているよね。
恨みの感情で心をがんじがらめにして生きてきたけれど、おばあちゃまの願いがこもった着物を思い浮かべたら、自然と前に進みたいと思えた。
相手に変わってほしいなら、私も変わらなければならない――。
そのことに気づけたのは、優弦さんがいたからだ。
「くだらん……! お前たちの顔など二度と見たくない! 優弦、お前は二度と医者を名乗れないように手回ししてやるからな」
しかし、自分の思いは旦那様に届くことは無かった。
旦那様は荒々しく障子を開けて、部屋から出て行ってしまった。
足音が遠くなっても、私は頭を下げたまま、動かない。
「世莉、顔を上げて。もう十分だ……」
優弦さんの優しい声に、また涙が溢れ出そうになる。
「優弦さん……、もしこれで本当に優弦さんが医者でいられなくなったら、私は……」
「なぜ君が泣く。大丈夫だ、何も問題はない」
ふわっと目を優しく細めて、私の涙を拭ってくれる優弦さんは、さっきまで冷徹な顔をしていた人と同一人物だとは到底思えない。
「世莉様、大丈夫でしたか……!」
後ろにいた百合絵さんもそばに駆けつけて、私の背中を優しく摩ってくれた。
旦那様には何も届かなかったけれど、初めてあんなにまっすぐあの人と対峙できた。
その事実は、大きな一歩のように感じた。
「世莉さん……」
わずかに畳が沈み、目の前に小さな足が見えた。
涙を拭って顔を上げると、そこには切なげに微笑しているお義母様がいた。
「お義母様……」
「命を救う立場なのであれば、どうか、優弦さんの思いを今一度考え直してください。お願いします……」
私は、すべてのプライドやしがらみを捨てて、深々と頭を下げた。
その場にいる誰もが息を潜めているのが分かる。
優弦さんがそっと肩を抱いて体を起こそうとしてくれたけれど、私は頭を下げることを止めなかった。
「私は、祖母を差別したあなたを一生許すことはできません。けれど、この家には変わってほしいと思います」
「な、何を……」
「変わっていくことを受け入れなさいという祖母の教えを、せめて守られたら……っ」
後半の言葉は、ほとんど震えてしまっていた。
おばあちゃま。もう二度と会うことは叶わないけれど、今の私の判断は間違っていないと、そう思ってくれているよね。
恨みの感情で心をがんじがらめにして生きてきたけれど、おばあちゃまの願いがこもった着物を思い浮かべたら、自然と前に進みたいと思えた。
相手に変わってほしいなら、私も変わらなければならない――。
そのことに気づけたのは、優弦さんがいたからだ。
「くだらん……! お前たちの顔など二度と見たくない! 優弦、お前は二度と医者を名乗れないように手回ししてやるからな」
しかし、自分の思いは旦那様に届くことは無かった。
旦那様は荒々しく障子を開けて、部屋から出て行ってしまった。
足音が遠くなっても、私は頭を下げたまま、動かない。
「世莉、顔を上げて。もう十分だ……」
優弦さんの優しい声に、また涙が溢れ出そうになる。
「優弦さん……、もしこれで本当に優弦さんが医者でいられなくなったら、私は……」
「なぜ君が泣く。大丈夫だ、何も問題はない」
ふわっと目を優しく細めて、私の涙を拭ってくれる優弦さんは、さっきまで冷徹な顔をしていた人と同一人物だとは到底思えない。
「世莉様、大丈夫でしたか……!」
後ろにいた百合絵さんもそばに駆けつけて、私の背中を優しく摩ってくれた。
旦那様には何も届かなかったけれど、初めてあんなにまっすぐあの人と対峙できた。
その事実は、大きな一歩のように感じた。
「世莉さん……」
わずかに畳が沈み、目の前に小さな足が見えた。
涙を拭って顔を上げると、そこには切なげに微笑しているお義母様がいた。
「お義母様……」