天敵御曹司は政略妻を滾る本能で愛し貫く
 そして、目を閉じ、優弦さんとの未来を頭の中で思い浮かべてみる。
 自分が母親になることはしっかりとは想像できないけれど、優弦さんと一緒に守るべきものが増えると思うと……、胸が温かくなった。
 どんな未来になるかは、誰にも予測することはできない。
 だけど、優弦さんと一緒なら、どんな未来も乗り越えていけると思えた。
 私は握りしめられていた手に力を込めて、顔をあげる。
「はい。私もです」
 微笑みながらそう返すと、優弦さんは心から幸せそうに目を細めた。
 その笑顔を見て……、この人と家族になれてよかったと、心の底から思えた。
「世莉……。ずっと一緒だ」
「優弦さんの、そばにいます」
 ぎゅっと抱きしめられ、私はそっと優弦さんの背中に手を回す。
 それから、どちらともなく見つめ合い、キスをした。
……八年間この人を恨み続け、生きてきた。
 それなのに、優弦さんは今、自分の人生になくてはならない存在になっている。
 人生は不思議だ。いつ何が起こるか分からない。
 そんな人生だからこそ、優弦さんと一緒に生きていきたいと思えた。
 私は……相良家に嫁いで、よかった。今は、心からそう思っている。 
 天国にいる家族を思いながら、私は大好きな人の体温を噛みしめた。



【拝啓 相良寿様

 いよいよ春爛漫の季節となりました。
 おだやかな日差しに、コートいらずの日が続いています。
 我が家のベランダにも花々が咲き乱れ、蝶々が訪れる季節となりました。

 文乃(ふみの)はもう三歳になり、虫をよく追いかけまわしています。
 相変わらず優弦さんは文乃に甘く、私ばかり叱っていて困ってしまいます。
 そういえば、この前お義母様が文乃に虫を見せられて、尻もちをついていました。
 お義母様は楽しそうに笑っていましたが、お怪我をしていないか不安です。
 お家では変わらずお過ごしでしょうか。

 子供の成長は早いものです。
 目を離した隙にあっという間に大きくなってしまい、寂しいような嬉しいような、複雑な気持ちです。
 文乃は最近、〝おじいちゃん〟という存在を知り始めました。
 どうか、心が落ち着いたときに、文乃に会ってくださいませんか。

 昨今、優弦さんの活動もあり、バース性に関する差別は少なくなってきたように思えます。
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