全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
「うれしい?」

「うん。感動してる」


 男性からの花のプレゼントがこんなにうれしいのだと実感して、胸がジーンとした。


「ありがとう。花瓶を用意しなきゃね。綺麗なバラがしおれちゃう」

「郁海がよろこぶなら何度でも持ってくるよ」


 バラに顔を近づけて、かぐわしい香りを楽しみ、いったんそれをテーブルの上に置いた。
 次の瞬間、魁が私の腕を引き、自分の胸にすっぽりと収める。

 彼の両手が私の背に回り、ギュッと抱きしめられている状況だと理解した途端、自動的に私の顔に熱が集まった。


「か、魁……?」

「ごめん。郁海がかわいすぎて、つい。いきなり抱きつくのはダメだよな」


 魁はそう言って私から手を離したけれど、目の前は魁の筋肉質な広い胸板で。
 こうなると、必然的にひとりの男性だと意識せざるをえない。
 

「適当に座ってて? ご飯の用意は出来てるから。バラを生けたらすぐにメイン料理を持って行くね」

「なんかテーブルの上に、すでにいろいろ準備されてるなぁ」

「うん。がんばったんだよ」

< 104 / 149 >

この作品をシェア

pagetop