全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
「俺が考えてることはすごくシンプルなんだよ。郁海と一緒に楽しく過ごして笑っていたい。たまにはどこか旅行に行ったりとかさ!」

「……それだけ?」

「うん。子どもができたら子連れであちこち出かけよう」


 話が一足飛びに飛び越えてしまった感じで、私は思わず絶句した。
 子どもというキーワードが出たけれど、魁はどこまで先を想像して言ったのだろう。


「ああ……ごめん、郁海を困らせる発言だったな。でも俺は本気で言った」

「今は本当にそう思ってても、途中で心変わりするかもしれないでしょ。って……私のほうこそごめん。こんな考えを持ってるから、未だに独身なんだよね」


 人の心は変わる。裏切られることだってある。
 愛という不安定なものを信じて、恋愛をしたり結婚に踏み切るのが、私の中で年々怖くなっているのはたしかだ。


「昔、婚約解消したのがトラウマになっちゃってるの」


 人生経験として一度は結婚してみるのもアリだな、なんて考えたりもしていたけれど、私はそう簡単にいきそうにない。


「心に大きな傷が出来てるんだな……」

「お相手やご両親がね、ふたを開けてみたら実はすごく嫌な人たちだったのよ。あちらは名家だったから、最初からうちの家を下に見ていたし」

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