全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
 ホテルの一室に入ってビジネスバッグをソファーに置いた彼が、私を後ろから力強く抱きしめた。
 私が振り返って向かい合ったところで、互いの唇を味わうようなしっとりとしたキスを交わす。

 駿二郎はキスが上手だ。
 緩急をつけて角度を変え、自然と私の口を開けて舌を侵入させる。

 彼の香水の匂いと温もり、口内をむさぼられる感覚に酔いしれて、どんどん体の熱が上がっていく。

 私の背中に回っていた彼の手が、ブラウスの裾から侵入して素肌を撫でた。


「あっ……駿二郎……シャワー行こ」


 私は耳元でそう囁き、奥さんが選んだと思われる彼のネクタイをほどいた。

 ふたりでシャワーを浴びて汗を流し、バスルームを出たらベッドへなだれ込む。
 駿二郎の持つ男の色気にクラクラしつつ、私は求められるよろこびで恍惚とした。


「郁海はいい女だな」


 腰を振るのを休めた彼が、熱い吐息を漏らしながらつぶやく。
 そう思ってくれていることがうれしくて、私はうっとりとして微笑み返した。

 額に汗をにじませた駿二郎が、乱れた私の前髪を指で()く。
 ひとつになったまま見つめ合ってキスをする、この瞬間がたまらない。

 私はどんどん快楽の波に飲まれ、彼の背中にしがみつきながらみだらな声で鳴いた。

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