全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
「魁くんはたしか……郁海より十歳年下でしょう?」

「そうだね」

「アンタ、自分の年齢忘れちゃったの? なにを考えてるのよ!」


 母は奪い取った私のスマホをテーブルの上に乱暴に置き、両手で頭を抱えてうつむいた。


「魁は二十七歳で若いけど、もうとっくに大人だよ。しっかりしてるし、頼りがいもある。まぁ……お母さんは反対すると思ってたけど」

「当たり前よ! 交際するなら、もっと郁海に見合う男性にしなさい」


 母の反応は私が予想したとおりだ。
 だけど、相手はどんな人なのかと聞かれたから正直に答えたまでで、私は別れる気など毛頭ない。


「お母さんの理想は、大手企業に勤務しているとか公務員で、年齢が同じくらいの男性でしょ?」

「わかってるじゃないの!」


 長年言われ続けているのだから、母の理想や許容範囲は重々承知している。
 年齢の面で、魁がそこから外れているのも。


「いいじゃないか、ふたりが好きあっているんだから。無理に見合いをさせて、好きでもない相手と交際させるよりも、郁海は幸せだろう」


 話を聞いていた父が助け舟を出してくれた。
 いつもやんわりと母を止めてくれる父に感謝だ。

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