全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
***

 翌朝、駿二郎から『昨夜はすまなかった』とメッセージアプリに連絡が来た。
 お子さんの体調は大丈夫なのかと尋ねたら、夜間休日診療をおこなっている病院で診てもらえたとのことで、大事を取って入院したが今は落ち着いているらしい。
 
 彼は今日、午後から出勤するそうだ。
 子どもが一晩入院したのだし、我が社にももちろん有給休暇の制度もあるのだから、いっそ休んでしまえばいいのに。
 彼は本部長という役職だから、出社しなければいけない事情がもしかしたらあるのかもしれないけれど。
 私もそうだが、彼もなかなかの仕事中毒だ。


「郁海、おはよう」

「おはようございます」


 出勤後、いつものように休憩スペースで由華さんと朝のあいさつを交わす。
 にこりと笑ってみたが、由華さんが私の顔色をうかがうように覗き込んできた。


「なんか元気ないね。どうした?」

「いろいろ……ありまして」

「さっきうちの部署の人間が、『山路本部長が午前に半休を取ったから、予定してた会議が明日に変更になった』って話してるのを聞いたんだけど、それと関係ある?」


 駿二郎の名前を出されて、心臓がドキッと大きく脈を打った。
 由華さんはするどい。いつもだけれど、なにもかもお見通しだ。

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