全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
「なに、これ……」


 中身を確認してみると、入っていたのはなにかのパンフレットと価格表のような紙だった。


「郁海、週末にお見合い写真を撮りなさい」

「は?!」


 ウキウキとした表情で話す母とは対照的に、私はげんなりとして頭を抱えた。

 母には前々から早く結婚しろと急かされていて。
 会うたびに、誰か相手はいないのかとうるさく聞かれていたので、今日もそんな話だろうと、なんとなく想像はついていたのだが。
 思いつきだとしても、まさかこんなことを言いだすとは。


「私、お見合いはしないから」

「お願いだからしてちょうだい! 大丈夫。まだ間に合うわ。郁海は私に似て美人だもの」


 “間に合う”とか言わないでもらいたい。いくらなんでも傷つく。


「私の時代はお見合い写真といえば振り袖だったけど、今は洋服でもいいもの。ここの会社に頼めばね、全部やってくれるの。髪のセットやメイクもしてくれるし、洋服もレンタルできるのよ。もちろんカメラマンはプロ!」

「お母さん……」

「あちこちで娘を売り込もうにも、良い写真がないとできないじゃないの!」


 母はかなり乗り気で、明日にでも電話で予約をしそうな勢いだ。
 どうしよう。絶対に止めなくては。

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