全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
「会ってみたところで、とんとん拍子にいくわけないでしょ? 私自身が望んだお見合いじゃなかったんだから」

「……だよな」

「そう思ってたんだけど、実際には意外に悪い印象はなかった。見た目は可もなく不可もなくだったけど、細かい気遣いができるやさしい男性だった」


 なぜか私はその男性とお見合いの席で会話が弾んでしまった。思いもよらない神様のいたずらだ。


「好きだとか愛してるって感情ではなかったけど、これも縁かなと思ったの。お見合いはきっかけみたいなものだからね。結婚を意識するような縁ができたのなら、それは良いことなんじゃないかなって考え方を変えたのよ」

「……それで?」


 想像とは違う方向に話が進んだからか、魁が不可解だとばかりに顔をしかめた。


「結婚を前提に付き合うことになった」


 まったくお見合いに乗り気ではなかった私が前向きになったのだから、母と妹はもろ手を挙げてよろこんだ。
 だけどそれだけで済むわけがない。


「そこからが大変だったのよ。周りはとにかく早く結婚させようとするから。どんどん外堀を埋められていく感じでね。私もその彼も流されるまま……婚約したの」

「婚約……」

「だけどみんなそれぞれ思惑があったし、私も自分の人生を左右することなのに、こんなに簡単に決めていいのかな……とか怖気づいたのもあって。周りからの圧力もすごかったし、結局うまくいかなかった」


 実はもっと決定的な出来事はあったが、今は端折って話しておく。
 久しぶりに会って食事をしているというのに、場をこれ以上暗くするのは嫌だから。

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