全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
「私はあの男のどこがいいのかわかんない!」

「そうですか?」

「なんていうか……どことなく胡散臭い!」


 我が社の営業戦略本部長に対して、なんてことを言うんだ。
 由華さんの発言に思わず爆笑してしまった。


「だいたいね、人事部に頼んで郁海たちを異動させるなんておかしでしょう?」

「そうですけど……彼も常務あたりからきつく(とが)められたはずですよ」

「それで、本社には戻ってこられそう?」


 その質問には、あいまいに笑って首をかしげた。
 駿二郎は私も本社に戻すと言ってはいたものの、それを全面的に真に受けて期待をしすぎてはいけない気がする。
 戻れる可能性がゼロではない、というだけだ。


「でも、これからは仕事一筋でいくしかないですからね。がんばります!」

「郁海、さみしいこと言わないの! 私はチャンスがあればまた恋愛したい」


 由華さんはいつでもとにかくポジティブで、それには尊敬しかない。
 彼女が恋に対しても前向きなら、私は全力で応援したい。

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