全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
「ねぇ、お姉さん、ひとり? 俺たちと一緒にあっちで飲もうよ!」


 私たちがいるテーブルのすぐ横にあるカウンター席で、若い女性がひとりで来店していた。
 大人しくお酒を楽しんでいる彼女の元に、ハンターのような男がふたり、あからさまにナンパしているのが自然と目に入ってくる。


「下心のある人と飲みたくない。さっさと消えてよ」


 その女性はかわいらしい容姿とは裏腹に、険しい表情で男たちに辛辣(しんらつ)な言葉を言い放った。


「なんなんだよ! さみしそうにしてたから声かけてやったのに!」


 男のうちのひとりがカチンと来たようで、女性に対して(すご)みを利かせる。
 だが、もうひとりの男がマズいと判断して止めに入った。


「断られたからって逆切れとか、マジでダサい」


 彼女は男に威圧されても眉ひとつ動かさず、冷めた表情でつぶやくように言う。
 もしも私なら怖くてあの場から逃げ出すかもしれないけれど、彼女は平気そうで、私はそれに舌を巻いた。

 けんか腰だったほうの男は、まだまだ言い足りない様子だったが、もうひとりに抑えられて自分たちのテーブルへ戻っていき、なにごともなくこの場が収まる。

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