全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
「いやぁ、あっぱれ!! あんなふうに一刀両断するなんて! 見ていてスカッとしたわ」


 酔った由華さんがキャッキャと笑いながらその女性に話しかけた。
 せっかく収まったのに、今度は私たちが口撃の的になるのではと、私は瞬時に肝を冷やす。


「……どうも」


 女性は上半身をひねってこちらを向き、口元を緩めながら短く返事をした。
 よかった、気を悪くはしていないようだ。


「ねぇ、こっちに来て話さない? あ、私たちは下心はないから大丈夫よ! アハハ!」

「ちょっと、由華さん!」


 自分で言って自分で笑いだす由華さんに、突然なにを言いだすのかとあきれてしまう。
 私たちがナンパをしてどうするのだ。


「ごめんなさい。この人、酔ってるから」


 ひとりが暴走して、もうひとりが止めに入る。
 先ほどの男たちと同じだなと考えたら、なんだか私まで笑えてきた。デジャヴではないか。

 由華さんはといえば「そんなに酔ってないよ~」と、酔っぱらいの常套句を口にしている。今夜は飲み過ぎだ。


「いいですよ。お姉さんたちなら楽しそう」


 まさかの展開だった。
 その女性は自分のグラスを持って、私たちのテーブル席へと移ってくる。

< 73 / 149 >

この作品をシェア

pagetop