全部欲しいのはワガママですか?~恋も仕事も結婚も~
「私も郁海も、要するに男運がないだけよ」

「そうなの? 郁海さん、本当?」


 由華さんは電撃結婚ののちにスピード離婚、私は親のゴリ押しでお見合いして婚約破棄した過去がある。
 その上、私はつい最近まで不毛な不倫をしていた。
 なので由華さんの意見を否定はできない。


「この年齢で未婚だと、ちょっと恥ずかしいんだけどね」

「どうして?」

「それは……いつまでも結婚できないでいるんだなって思われるから」


 美知留ちゃんが不思議そうな顔をして私を見つめる。
 言ってしまったあとで、私の考えは彼女の価値観の外なのだと瞬時にわかった。

 他人からどう見られているのか、私はそれを気にしながら生きていると今の会話で思い知らされた。
 結局それでは、母と同じではないか。


「郁海さん、今から私、生意気なことを言うね?」

「……え?」

「年齢を気にしてるのは、郁海さんがそういう価値観に支配されているからだよ。何歳からでも、なにをしてもいいじゃん。一度しかない人生なんだし、他人に迷惑をかけないのは当然だけど、自分の好きなことをしようよ」


 うつむきながら、思わずニヤニヤと笑ってしまう。
 私が幼少期から母に植え付けられてきたものと真逆の考えだ。
 “自由の翼”を持つ美知留ちゃんが神々しくて、眩しく見えた。

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