一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ
その時、航空会社の社員が山根に向かって走ってきた。
同時に紗羽のスマートフォンに本社からの着信がある。
どちらも予定より早く台湾を出発した飛行機が、エンジントラブルを起こしたとの一報だった。
連絡を聞いた瞬間、紗羽は膝から力が抜けて床に崩れ落ちそうになる。
「まさか!」
なんとか踏みとどまったが、体が震える。
航空機のエンジントラブルといえば事故に繋がる重大な不具合だ。
「や、山根さん……」
思わず山根を見ると、彼の顔も心なしか青ざめている。
「大丈夫です! きっと無事にお帰りになります!」
自分に言いきかせるように言うと、山根は新しい情報を聞いてくると言って足ばやに去った。
ひとりになった紗羽は、急にロビーがざわざわとし始めたように思えてきた。
空港の職員たちの動きも、いつもより慌しいのではと勘繰りたくなる。
関係者が集まり始めた中で紗羽が立ちつくしていると、山根が詳しい事故の内容を調べてきてくれた。
それによると、順調に飛行していたチャーター機に、エンジントラブルのサインが出たらしい。
もう日本の領空に入っていたから羽田へ帰ることを選択して、右エンジンを止めたままで飛行しているという。
引火の危険を避けるため燃料を海上に投棄するか、ギリギリまで燃料を消費してから着陸することに決まったようだ。