一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ
いつもそうだ。幸せは突然にピリオドが打たれる。
さっきまでの心の温かさは消えて、紗羽は不安に押しつぶされそうになった。
(大丈夫、きっと大丈夫)
心の中で呪文のように唱えながら、紗羽は山根と展望デッキに上がった。
滑走路には万が一の場合を想定したのか、消防車が走っているのが見えた。
青空を見上げる。
今は少しでも空のよく見えるところにいたかった。
(この空のどこかに、匡さんが乗った飛行機が飛んでいる)
さっきゆかりに背中を押されたばかりなのに、やり切れない。
やっと一歩を踏み出せる勇気をもらったのだ。彼に素直な自分の気持ちを伝えたい。
(どちらを選んでも後悔する? 私、まだ答えを言っていないのに……)
山根とふたり、会話もなくじっと遠くの空を見つめた。
ほんのわずかな時間だったかも知れないが、重苦しい気分は永遠に続くかと思われた。
「あ、あれは?」
微かな点のような物体が見えている。
次第にこちらに近付いてくると、それは飛行機の形をしている。
「あれは、煙?」
動かしていないはずの右エンジンから煙が見える。
エンジンの不具合を示す警告ランプを確認したらエンジンオイル圧が下がっていたと聞いている。
すでに右エンジンは停止させているはずだ。
「なにが起こっているんでしょう」
「早く、着陸してほしい……」
こんなに苦しい思いをするなんて、もう嫌だ。
どうしてこの前の夜に、素直に匡に好きだといわなかったんだろう。
もし愛を告げないまま匡になにかあったら、一生後悔してしまう。
(帰ってきて! 愛しているの! あなたの愛を信じているから、無事に帰ってきて!)
紗羽は祈り続けた。