一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ



「その浴衣は? 三船さんから?」

匡は話題を変えた。紗羽の年齢より少し大人っぽい古風な柄に興味が湧いたのだ。
濃紺の地に、白と薄紫の桔梗が大胆に描かれている。
赤い半幅の帯が紗羽の若さを感じさせた。

「実は、田園調布のお屋敷のご近所の方が作って下さっていたものなんです」

三船の説明によると、小さい頃から紗羽を可愛がってくれていた人からのプレゼントらしい。
若い頃の着物を仕立て直したというから、どこか古典的な趣のある絵柄が逆に新鮮に映る。

「去年の夏は、紗羽さんも受験勉強で浴衣どころではありませんでしたので」
「そうか。よく似合っている」

「ありがとうございます。匡さん、花火を買っておいたんです。食事のあとで遊びませんか?」

「花火?」
「匡さんと花火大会には行けないから……線香花火とかは、お嫌いですか?」

どうして『花火大会にはいけない』と思い込んでいるのかはわからなかったが、紗羽から初めて誘われたんだと気がついた。



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