一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ
匡がシャワーを浴びてからダイニングルームに行くと、浴衣姿の紗羽が三船を手伝っていた。
紗羽が髪を一つにまとめて項を見せている姿に、匡は目を見張る。
「あ、匡さん。先にビール飲まれますか?」
「いただこうか」
落ち着こうと席に着いたら、テーブルにはいつもより豪華な食事が並んでいるし花も活けてある。
匡が江戸切子のグラスで冷えたビールを飲んでいると、三船が大皿に盛った鯛のカルパッチョを運んでくる。
「今日は匡さまのお誕生日でございましたよね」
「誕生日? ああ、忘れていたよ」
「フフッ。だと思いました」
紗羽が悪戯っぽく笑いながら小皿を並べている。
「三船さんとこっそりお誕生日のご馳走を準備していたんです」
「ええ、紗羽さんも八月生まれですから、ご一緒にお誕生祝いができないかなと思いまして」
紗羽の誕生日は八月だったのかと匡は焦った。
「うっかりしていたな。君も八月生まれだったんだ」
嬉しそうに紗羽が微笑んだ。
「匡さんはしし座、私はおとめ座ですからもう少し先です」
「まさか今日、こんなに早くお帰りになるとは思っていなかったからバタバタしてすみません」
テーブルにサラダを持ったガラスの鉢を置きながら、三船が申し訳なさそうな顔をする。
「いや、十分なご馳走だよ。何年振りかな……家で誕生日を祝ってもらえるなんて」
母が生きていた頃以来かもしれないと、匡は心の中で思い出していた。
「今日がふたり同時の誕生会なら、君へのプレゼントはいつ贈ろうか?」
紗羽の誕生日も祝ってやりたくて、匡が声をかけた。
「私にとっては、今の暮らし全部が匡さんからのプレゼントですから」
大真面目に答える紗羽が愛らしいく、つい頬が緩みそうになってしまう。