冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす
電話を切ると、バッグに未来のあれこれを詰め込んだ。
お昼寝している未来は抱き上げるとむずかって泣いたけれど、それを抱っこ紐の中でゆする。そうしながら、配車してもらったタクシーで出発した。

笛吹製粉本社は、このマンションからタクシーで二十分ほどだ。道が空いていればもっと早いだろう。
私が勤めていた頃と場所は変わらない。総務に行けば、当時の社員たちと顔を合わせるだろうが、迷う暇もない。
受付に知っている顔ぶれはなく、私は案内されるままに応接室に向かった。
本当に久しぶりだ。まさか未来を抱いてくることになるとは思わなかったけれど。

一般社員用の打ち合わせスペースではなく、役員室などのある上階に応接室はある。それこそ、他社の社長など重役クラスが訪れる際、使用される部屋だ。
受付の女性が声をかけ、ドアを開ける。私は一歩入り、言葉を失った。
そこにいたのは二年以上ぶりに会う弟の姿だった。

「姉ちゃん……」

ソファに座っていた望が立ち上がり、泣きそうな顔で私を見た。その横にいた女性も立ち上がり、私に頭を下げる。可世さんだった。

「明日海、こちらへ」

向かいに座っていた豊さんが言うので、私はソファについた。

「望……、今まで何をしていたの?」

私の言葉に、望が深々と頭を下げた。
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