冷徹御曹司は過保護な独占欲で、ママと愛娘を甘やかす
「姉ちゃんごめん。そしてあらためて、本当にすみませんでした。笛吹豊専務……いえ、副社長」
「豊さん、ごめんなさい」

可世さんも頭を下げる。よく見ると、彼女のお腹は少し膨らんでいるようだ。妊娠をしているように見える。

「可世とあなたの婚約を知った上で彼女を連れて逃げました。幸せになるにはこうするしかないと東京を離れました。あのときは、ふたりで幸せになることで精一杯で、残される人のことなんか考えもしなかったんです」
「私たちが子どもでした。ごめんなさい」

豊さんが涙をぬぐい、望が顔を上げた。

「仙台でアパートを借りてふたりで働いていました。可世が妊娠して、このままあの土地で親子三人暮らしていくつもりだったんです。それが先月、こっちの友人に顔を見られて。さらに同僚に、俺を訪ねてきた客がいるって言われて、もう逃げられないと思いました」

豊さんが首を左右に振る。表情は硬い。

「きみたちが駆け落ちをしたことで一番悲しい想いをしたのはご家族だ。まずは、俺なんかよりご家族に謝るべきだ」
「両親にはこれから。可世の家にも挨拶と謝罪に行くつもりです。でも、まずはあなたにと思って……! 午前中、作田に会って、あいつから聞きました。笛吹副社長は、俺を探すために、姉ちゃんを傍に置いているって」

私は驚いて顔をあげた。確かに作田くんの認識はそうだろう。
私は政略結婚で嫁ぎ、望を探すため人質のように扱われていると思っている。
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