もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです
 少し前までは受け止めきれなかった血色の瞳を、シエルは見つめ返した。

 彼は背が高く存在感のある人だし、戦場の香りを濃厚に漂わせる騎士だ。腰に佩いた剣も恐ろしくないといえば嘘になるが、グランツ自身は恐ろしい人ではない。

(私をとても大切に思って、優しくしてくださるから)

 グランツはシエルとの逢瀬を重ねても、絶対に家の中へ足を踏み入れようとしなかった。

 『恋人でもないひとり暮らしの女性の家に、厄介になるわけにはいかない』という理由によるものだ。どうやら彼の中には、守りたい一線があるらしい。

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