もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです
 彼がなにも望んでくれないから、なにかをしたいと思ってしまう。というより、なにかしなければならないのではと思っていた。

(でもきっと、グランツ様は遠慮なさるのよね)

 他人の願いのために生きてきたシエルにとっては、存在意義を揺るがす事態だったが、なぜか不安や焦りよりも安堵を感じる。なにもしなくていい、という優しさは、シエルの警戒心を溶かした。

 彼女が穏やかな時間に心地よさを感じていると、不意にグランツの表情が陰った。

「そろそろ貴女がなぜここに住み、魔女と呼ばれているのか聞いても構わないだろうか?」

「え……」

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