もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです
 シエルは少しだけ悩んで、ジャムをつけた焼き菓子を口に運んだ。

(私のことを話したら、グランツ様はここに来なくなるかもしれない)

 おいしいと思っていた菓子の甘さが遠ざかり、代わりに苦い思いが芽生える。

「私が本当に魔女だとしたら、どうしますか?」

 目を見張ったグランツが表情を引き締めた。

「私は私の見聞きしたものを信じる。私が知る限り、貴女は決して魔女と呼ばれるような人物ではない。先ほども雨の中のミディイルを心配してくれただろう?」

 はっきりした言葉と声色の優しさは、シエルの心を震わせた。

「でも、私は……」

 ためらって、開いた唇を閉じてしまう。

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