記憶喪失のお姫様は冒険者になりました
この日、初めて俺はシュティーナを1人の人間とし認めた。
そしてその次の日からは大忙しとなった。
それでもなんとか頑張ってこれたのはシュティーナのお陰だ。
1ヶ月半がたった頃、シュティーナは俺に頼み込んできた。
「お兄様、お願いがございます!」
改まってそんなことを言うとは余程重要なことなのだろう。
俺はそう思って動かしていた止め、シュティーナの方を見る。
「なんだ?」
俺がそう問えばシュティーナは表情を固くして、少し間を開けてから答えた。
「私は冒険者になって大切な人をそばで支えたいです!だから…その許可を、いただきたく…」
最後の方は言葉を濁したがちゃんと伝わった。
つまりシュティーナはあのクロとかいうやつのことが好きで、そいつをそばで助け、支えたいと言うことだろう。
シュティーナが直接、俺にお願いしたのは初めてだった。
いつもシュティーナは自分の願いをしまい込んでしまうから。
そしてその願いをしまい込ませていたのは俺にも責任はある。
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