記憶喪失のお姫様は冒険者になりました
私はそうドラゴンに声をかけてからドラゴンの羽の付け根に手をそっと重ねる。
「…どうか治りますように、ヒール」
魔法が発動し、ドラゴンの羽の付け根はみるみるうちに傷が塞がっていく。
「ドラゴンさん…」
私はドラゴンの羽の付け根の傷が治ったのを確認するとドラゴンの前に舞い降りた。
ドラゴンとお話をするなんて無謀なことかもしれない。
それでも…。
「ミホ…?」
「クロさん、皆さんを安全な場所へ…お願いします」
私はクロさんにそっと笑いかけた。
"大丈夫"そう伝えるように。
「…」
クロさんはコクリと頷くと、皆を安全な場所へと移動させた。
私はドラゴンと目を合わせる。
そして語りかける。
「ドラゴンさん!」
私はばっ!と両手を広げた。
ドラゴンを罠に近づけないようにするために。
「ドラゴンさん、お話を聞いてください!」
私の言葉なんてきっとわからないよね。
それでも伝えなきゃ。
ドラゴンを殺さずにすむなら…。
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