記憶喪失のお姫様は冒険者になりました
「ミホ、今までありがとう。…楽しかった」
「…え?」
ドア越しから聞こえたクロさんの声。
それは何かを覚悟したようなそんな声だった。
クロさん、それはどういう意味ですか?
「俺は…ミホと過ごせてよかった。幸せだった。なぁ、ミホ」
クロさん…それではまるで……。
「生きろ。生きて……幸せになれ」
お別れみたいではありませんか……。
ねぇ、クロさん。
どうして何も話して下さらないのですか?
そんなに私は頼りないですか?
「クロさん…行かないでくださいっ」
ずっとそばに……。
クロさんの顔が見たい。
なのにどうして?
ドアを開けてくれないの?
私は涙が溢れて止まらなかった。
どうしてこうなっているのかわからず。
でも…私の前からクロさんがいなくなる。
その事だけはわかってしまったから。
「…さよなら、ミホ」
「クロさんっ!!」
「早く来い」
その言葉が聞こえるとクロさんはゆっくりと進み始めた。
クロさんが遠のいていく……。
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