記憶喪失のお姫様は冒険者になりました
「行かないで…クロさん……っ」
ドアの前にはまだ誰か人がいた。
騎士さんの人だ。
その人が私が外に出ないように見張っている。
「クロさんっ…!」
どうして……何も教えてくれないのですか?
クロさんが何をしたと言うの?
どうして……私からクロさんを奪うの?
しばらくすると馬車の音が聞こえた。
それを合図に騎士さんもいなくなった。
クロさんは……王都に連れていかれたんだ。
「……」
私はしばらくその場から動けなかった。
何も話してくれず、お別れの言葉を言って去ったクロさん。
私は……なんて無力なのだろう?
そう思っていると足音が聞こえた。
その足音は私の部屋の前で止まった。
……誰?
その足音の主は私の部屋のドアを開けた。
足音の主はこの宿の女将さんだった。
長い髪はお団子にしてまとめている。
愛嬌がよく、誰にも分け隔てなく優しい人だ。
「あんた、大丈夫かい?クロックスだけ連れていかれたんだね……」
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