ブルー・ロマン・アイロニー


「ちょっと、字が滲むからやめてよ」

「ふうん、こういうふうに書くのか」

「というか、今まで知らなかったの」

「いやだって、言われなかったから」

「いやそれは、訊かれなかったから」


どうやら、ひらがなであまり、だと思っていたらしい。


まあわたしも、画数が多いから提出物とかテストじゃないときはひらがなで書くことが多いし。

わたしが藤白あまりだと思っている人もそう少なくはないんだろう。



「由来は?」

「なんだったっけ。たぶん、聞いてない」

「うぉぉい!そこは聞いとけよ……!」

「しょうがないでしょ!だってわたしが小学生の時にはもう……」


涙が出そうになったから顔をごしごしと擦る。

摩擦でどうにかなるものじゃないけれど。


お父さんとお母さんの死は一度たしかに消化した。

だけど無理やりだったそれは先日、ノアによって消化不良だったことを教えられた。

だからいまも、こうしてゆっくりと消化している状態なんだ。



「……悪かったよ。俺が考えてやるから」

「ノアが?わたしの名前の由来を?」

「そうだよ。俺の名付け親はお前だ。俺もお前の名付け親になる」

「わたしの名付け親はお父さんとお母さんだよ」

「じゃあ第二の名付け親」

「まーた突拍子もないことを……」


でも……自分の名前の意味、か。

考えたこともなかったな。


テレビのCMが終わったことにも気付かず、紙とペンを持ちだしてあれでもないこれでもないと書き出しているノアを見て、わたしはちょっとだけ笑ってしまった。


< 182 / 239 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop