ブルー・ロマン・アイロニー
中庭にあるベンチに先に腰をおろしていたわたしに、近くの自販機でジュースを買っていたナナちゃんが隣に座った。
「はい、これ」
「あ、ありがとう。あっ、お金……」
「いいよ。これくらい」
ふはっ、とベンチの後ろ側から声があがる。
背にもたれるようにしていたノアが、挑発的にナナちゃんを見上げていた。
「お前らはその何倍も、あまりに奢らせてたもんなぁ」
「ちょっとノア、いいから……」
「お前さあ、いまさら何の用だよ?」
「ノア」
「どうせ他のやつにも見られちまったんだろ。俺たちはだれにも洩らしてねえぜ。お前が同性愛者だってことも、アンドロイドにガチで惚れ込んで──」
「ノア!……黙って」
さすがにこれは命令として受理されたんだろう。
肩をすくめたノアは、それ以降なにも口を挟まなかった。
ごめんね、と謝ろうとしたわたしにナナちゃんが、いいよ、と言った。
「その子が言ってること、全部ほんとうのことだから」
ナナちゃんは自分の後ろに控えているアンドロイド──アズラに目をやった。
「……まさか自分が」
ナナちゃんが、ふ、と目元を緩める。
笑っているのか、泣きそうなのか。どっちにも取れる表情だった。
「アンドロイドに恋をすることになるなんてね」
そうしてナナちゃんは、ぽつりぽつりと話し始めたのだった。