ブルー・ロマン・アイロニー
「……むしろ今までバレなかったのが不思議だね。自分でも思うよ、大胆なことしてるなあって」
でもね、考えてもみて、とナナちゃんがこちらを向いた。
「好きな人がこんなにも近くにいるのに、なにもできないなんて。それこそ酷だと思わない?」
わたしがなにかを答える前に、「ああ、思わないか」と遮られる。
「気持ち悪いって思うよね、普通は。アンドロイドと人間の馴れ合いなんて可笑しい、って」
はは、とナナちゃんが乾いた笑みと同時にぽろりと涙をこぼした。
透明で、小さくて、ちゃんと見ていないと見逃してしまいそうな雫。
たぶん今まで誰にも見せてこなかった涙。
ナナちゃんはきっと、根っこがわたしの似ているんだ。
無理をして、みんなに求められる“藤白あまり”を演じていたわたしと一緒で。
ナナちゃんもきっと、すべてを、自分の想いさえもひた隠しにして“柊ナナ”を演じていたんだろう。
「……ナナちゃんがキスしてるのを見たとき、わたしすごくびっくりした。衝撃的で、ナナちゃんには忘れてって言われたけど、忘れられる気がしなかった」
だって、と続ける。
「だってわたし、誰かのキスシーンを生で見るの初めてだったから」
「……は?」
じっと耐えるように下を向いていたナナちゃんが、わたしの言葉に驚いたように顔をあげた。
その潤った目からは太陽に反射した光の筋が透けるように白い頬を伝っていく。