ブルー・ロマン・アイロニー
先生はわたしがひとりでやってきたことになにも言及しなかった。
というか、たぶん、見て見ぬふりをされている。
わたしが教室でどんな立ち位置なのかも、ナナちゃんたちからどんな扱いを受けているのかもたぶん気付いている。
それでも、先生からなにか言われることはなかった。
きっと面倒くさいんだろうな。
ただでさえ仕事が山積みなのに、よけいなことに首を突っこみたくないんだろう。
先生のその判断は正しいのか、間違っているのか。
大人にならないとわからないこともあるのかもしれない。
「藤白さん?」
「あ、はい。これですか?」
「そうよ。ちょっと大変かもしれないけど、大丈夫そう?」
その聞き方はちょっとずるいと思った。
大丈夫かと訊かれて、大丈夫じゃないと答えることができる人はどのくらいいるのだろうか。
ロボットのようなオウム返しで「大丈夫です」と答えたわたしは、先生からプリントの束を受け取り、職員室をあとにした。