ブルー・ロマン・アイロニー
「あまり」
「……ナナちゃん」
ぐわんぐわんと足元からたよりなく揺れている世界。
だけど実際にわたしの足は揺れていないし、世界だっていつも通りなんだろう。
困ったようにナナちゃんが整った眉を下げる。
「そのままでいいんだよ、あまりは。無理して変わらなくていいよ」
ああそうかとそのときようやく気付いた。
求められていなかったんだ。
わたしが変わることなんて、誰も望んでいなかったんだ。
そのままでよかった。
わたしはずっとイジられ役で冴えない、“藤白あまり”のままでいないといけなかったんだ、って。
ナナちゃんは教室に入ってきたとき、髪を切ったわたしを誰かわからないと言った。
だけどそんなことはないはずなんだ。
────おはよう。“あまり”。
最初からわたしだとわかって声をかけていた。
ナナちゃんは聞いていたんだ。
わたしとクラスメイトの子たちの会話を、全部教室の外から聞いていた。