破れた恋に、火をつけて。〜元彼とライバルな氷の騎士が「誰よりも、貴女のことを愛している」と傷心の私に付け込んでくる〜
「きっと貴族令嬢に対する正式な求愛の手順を踏むために、夜会でディアーヌに会いたいのよ。真面目な性格の彼、すごく良いじゃない。今週末に、コンスタンスが主催する大きな夜会が城の大広間であったはず。そこで会いましょうって、すぐに返事しなさい」

 ラウィーニアは命じることに慣れている彼女らしく、浮かない顔をしたままの私にてきぱきと段取り良くそう言った。

「……でも。ラウィーニア」

 彼女の言っていることは、いつも正しい。けれど、私はどうしても気が進まなかった。

 そんな大きな夜会で、この前までクレメントと付き合っていたはずの私がいきなりランスロットと踊っていれば、口さがない連中になんて言われるか。すぐに想像出来た。

「ディアーヌ。悪いことは言わないから。一度会ってみなさいよ。別に会うくらいなら良いでしょう? 何もすぐに彼と付き合って結婚しろと、そう言っている訳じゃないわ。夜会で少し、会って話するだけ。気が向けば踊っても良いかも。それにクレメントとの事は、もう終わったことよ。早々に忘れなさい。落ち込んで後ろ向きになっていても、何の良いこともないわよ」

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