【コミカライズ】【電子書籍化】婚約破棄された伯爵令嬢ですが隣国で魔導具鑑定士としてみんなから愛されています~ただし一人だけ溺愛してくる~
 ラーシュはカリーネに顔を寄せた。そして、彼女の書いた資料の修正箇所を指摘する。
「この部分を『認証制度』という言葉に変更して。それから、ここはもう少し柔らかい表現の方がいい。議会に出てくるのは、頭の硬いじじぃばかりだからな。あいつらが理解できるように、この表現は変えた方がいい」
 ラーシュが指摘するために資料に視線を落とすたびに、カリーネの頬を彼の髪が撫でていく。
「聞いていたか?」

 ラーシュがカリーネの方を見れば、顔が近い。聞いてました、と答えたいけれど、あまりにもの至近距離に彼の顔があるため、こくこくと頷くことしかできない。

「君はまだ、このような資料を作ることに慣れていないようだから、とにかく数をこなして慣れるのが先だ。魔導具士ではない者にもわかるようにまとめるのがポイントだからな」

 仄かに柑橘系の香りが、カリーネの鼻先をくすぐっていく。恐らくラーシュが使っている石鹸の香り。
「どうかしたのか?」

「どうも、しません。喉、乾いたので、お茶を飲んでもいいですか?」

「ああ、そうだな。少し、休憩にしよう」

 ラーシュの顔が離れたので、カリーネはやっと息ができるような気分になった。とにかく、彼の顔が近かったのが、カリーネの心臓に悪かった。

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