婚約破棄から始まる悪役令嬢の焦れったい恋愛事情
常に人当たりのいい笑みを浮かべており、どこか掴みどころがなく、けれど心の奥底に入り込んでくるアイカを密かに警戒していた。
ルビーもキャロラインも、アイカは親切で優しいと言う。
確かに簡単に心を開いてしまいそうになるし、誘導するのがとても上手いような気がするのだが、裏に隠れている刺々しい何かを感じていた。


「アイカ様……お姉様は今、モイセス様とドレスを選びに行っております」


最近、控えめだったルビーは「今を目一杯楽しむの」と、開き直ったのかモイセスにずっと一途だった事を周囲に明かした。
その事で令嬢の友人も増えてきたそうだ。
ずっと一途に、という点で多くの令嬢達の印象を好転させて、令息避けにもなりプラスになっているそうだ。


「そうなの。今日は皆様はいらしてないのね」

「最近は、とても忙しいみたいですから」

「ふふ、そうでしょうね。ベルジェ殿下から伺っているわ」

「……」


わざと聞いているとしか思えない嫌味な返答である。


「今日は貴女に用があったからいいのよ」

「私に、ですか?」


ビリビリと肌に感じる何かは良くないものだ。
いつも笑みを浮かべているアイカと対峙して感じるのは、得体の知れない恐怖とひんやりとするような肌寒さ……それは鳥肌がたつような時みたいなゾクリとした感じに似ていた。
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