婚約破棄から始まる悪役令嬢の焦れったい恋愛事情
「!!」

「……わたくしの方が、その女より上なのに」


小さな声だが視線と共にアイカから殺意を感じていた。
しかしアイカは怒りを必死で抑えているのか、ブルブルと震えながら握り込んでいた拳の力がスッと抜ける。
ギリギリと奥歯を噛み締めた後に、いつものようにニッコリと笑みを浮かべた。


「……今日は、この辺で失礼するわ」


何事もなかったかのようにこの場を去ろうとするアイカに声を掛けて引き止めようとした時だった。
リロイがアイカの進路を塞ぐようにして立ち、声を上げた。


「待ちなよ……?君にはまだまだ聞かなければならない事が沢山あるんだ」

「残念ながら、わたくしにはありませんわ。そこを退いて下さる?」

「そうはいかないよ。最終手段だったけど、仕方ないねぇ」


今にも怒りを爆発させそうなアイカの前に、リロイが数枚の紙をヒラヒラと揺らしてからアイカに渡す。
その顔はにっこりと優しい微笑みを浮かべていた。

アイカは恐る恐る紙を受け取り、文字を目で追っているようだ。
しかし直ぐにワナワナと震える指を見て、リロイの唇が大きな弧を描く。


「今日、これを実行した時点でゲームオーバーだよ。アイカ嬢……」

「ーーーッ!」

「証拠は揃ってる……ドノレス侯爵も悲しむだろうね」


アイカは渡された紙を勢いよくビリビリと音を立てて破いた。
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