婚約破棄から始まる悪役令嬢の焦れったい恋愛事情
モイセスはそう言って悲しそうに瞼を伏せた。
握り込まれる手に力が篭る。
それを見てハッとして口をつぐんだ。
勢いのまま聞いてしまったが、モイセスに辛い記憶を思い出させてしまったようだ。


「…………すまない、モイセス」

「いや、構わない。私は命尽きるまでベルジェに仕えるつもりだ」

「だが、バーズ公爵家はどうする!?」

「リロイが居るから大丈夫だろう」

「……モイセス」

「この先、誰かを好きになる事も愛する事もない……そう決めている」

「…………」

「叶うならば、誰かを守って死にたい」


その言葉の重みと内情を知っているからこそ、何も言えなくなった。
彼の後悔が苦しいほどに伝わってくる。


「そんな顔をするな。ベルジェには私の分まで幸せになって欲しい」

「!!」

「それが今の私の幸せだ」

「モイセス、俺は……っ!」

「時には直感的に動くのも時には必要だぞ?私が言えた事ではないがな。国王陛下もお喜びになるだろう」

「少し、自分の気持ちを整理したい……」

「……分かった」

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