婚約破棄から始まる悪役令嬢の焦れったい恋愛事情
「ベルジェ殿下、ようこそお越しくださいました!」
「お待ちしておりましたわ!さぁ、ルビー!殿下を案内して差し上げて」
「はい、お母様」
目の前には綺麗な仕草で会釈するルビー・カイネラの姿があった。
(人形のようだな……)
その姿を見て確かに美しいとは思ったが、ジュリエットの時のようなドキドキ感はなかった。
ルビーはキョロキョロと辺りを見回しながら何かを伺っているように見えた。
(……気のせいか?)
全く此方を気にしている様子もないが、自分ももしかしたらジュリエットに会えるかもしれないと、周囲が気になって仕方なかった。
何も喋らないルビーの代わりに、早口でよく喋るカイネラ子爵と夫人に促されるまま庭を案内される。
話を聞けば、ルビーがこうして誰かとの顔合わせに応じるのは初めてのことで、二人は想いが通じ合っているのではないかと遠回しに言いたいようだ。
「後は若い二人でゆっくりと」
「どうぞルビーを宜しくお願い致します!」
そう言われて中庭に案内された後に、侍女が紅茶を淹れて早足で去っていく。
「…………」
「…………」
特に二人とも何かを話すことはなかった。
いつもは相手が凄い勢いで話し始めるので、どうやって話しかけたらいいか迷っていた。
それにカイネラ子爵達とルビーの熱量は全く違うよう事だけは分かった。