婚約破棄から始まる悪役令嬢の焦れったい恋愛事情
彼女はそう言って深く深く頭を下げた。
下心とはどういう意味なのか、考えを巡らせても何も分からなかった。
けれど自分の兄妹はキャロラインだけだし、友人のリロイだろうかと考えてみるものの、ルビーが目的にするような人物は思い浮かばなかった。


「それで、あのっ……きょ、今日は、その今日、モッ、モイセス様は……!」


突然、挙動不審になるルビーの瞳は右往左往して、ブンブンと千切れそうな程に振っている手首に目が回ってしまいそうだった。


「ルビー嬢、少し落ち着いた方が……」

「はっ、はい!!!」


返事をした彼女は自らを落ち着かせる為か、紅茶をゴクリゴクリと音を立てて飲み干した。
呆気に取られていると、ルビーはモジモジしながら恥ずかしそうに口を開いた。


「本日、モイセス様は……何処にいらっしゃるのかなって」

「モイセスは馬車か門の近くで待機していると思うが」

「屋敷にいらっしゃっているのですかッ!!!?」


ガタリと勢いよく立ち上がったルビーの姿を見て驚きながらも頷いた。
ハッとした後に頬を赤らめたルビーは可愛いらしく咳払いをしてから再び椅子に腰掛けた。
この様子から、もしかしてこの顔合わせを受けたのは『モイセス』に会いたかったかではないかと推察出来た。
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