婚約破棄から始まる悪役令嬢の焦れったい恋愛事情
振り向くと満面の笑みを浮かべて此方にやって来るルビーの姿があった。
堂々とベルジェを無視する所も流石ではあるが、いつもよりも着飾っているせいか輝きが三割増である。

(ま、眩しい……!けれどベルジェ殿下を誘惑しようという気合いを感じるわ!!)

モイセスはベルジェの近衛騎士であると同時に公爵家の嫡男である。
年は十歳上で、ベルジェが幼い頃から仕えているようだ。
ルビーはベルジェが最も信頼しているモイセスから攻めていくつもりなのだろうか。
最近、モイセスに対してのアピールが半端ではないような気がしていた。


「あのっ、モイセス様……!あのっ、あの……わたくし」

「…………?」

「……っ」


そしてベルジェ同様に、ルビーはモイセスの前では「あの、あの」と言っている。
気まずい沈黙の後、見兼ねたモイセスが口を開く。


「……ルビー嬢、今日もベルジェ殿下を宜しく頼む」

「モイセス……ッ!」

「そ、それは!えっと、わたくしは……モッ、モ、モイセス様に」


顔を真っ赤にしてモジモジしているルビーは同性である自分も惚れてしまいそうなくらいに可愛らしい。
そしてモイセスもまるで父親のような表情で嬉しそうに二人を眺めている。
そんな彼を見て、ある事を思い出す。
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