婚約破棄から始まる悪役令嬢の焦れったい恋愛事情
「あ……!」


そう声を上げた瞬間に、モイセスが何事かと顔を上げた。


「どうし……?」

「わっ……!」

「……!?」


至近距離で重なる視線……いつもは鋭い視線のグリーンの瞳が見開かれているのを「綺麗だな」なんて呑気な事を思いながら見ていた。
体はピタリと固まったように二人共、動かなかった。
先にモイセスが声を上げる。


「す、すまない……!」

「いえ……こちらこそすみません」

「葉は?」

「え……?」

「取れたのか?」

「今取りますね…………はい、取れました!」

「…………ありがとう」

「ぷっ……」

「……ははっ」


このハプニングが起きた事がおかしくて、二人で顔を合わせた後に笑い合っていた。
どうやらモイセスも同じ気持ちのようだ。

しかし目の前では自分達よりももっと大変な事が起きていた。


「ーーーはっ、ばっ!!モイ、それ!?ッ、な!?」

「……………………!」
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