天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています

走るように駅のホームへ向かうとバッグの中でスマホが鳴っていた。
視線を落とすと表示は竹之内さんからだった。
私は竹之内さんに非はないのに苛々としてしまい電話に出なかった。
こんな人なら会いたくなかった。
母を偲びたいと言われ、生前の母の話ができると思いのこのこと出ていった私がバカだった。
情けなくて涙が込み上げてきてしまう。
先程ハンカチを佐倉さんに貸したままで私の手元にハンカチはなく、手でさっと拭い歯を食いしばった。
けれど電車を降りた途端堰き止めていたはずの涙が溢れて出てしまう。
早足で歩き、人混みをすり抜けようやく家に辿り着いたところで玄関に立っている人が目に入った。
竹之内さんだった……。