天涯孤独となったはずなのに幸せに溢れています
私はメッセージを読んだが、なんて返信をしたらいいのか困ってしまう。
佐倉さんは思った気持ちを打ち明けてくれたのに私は何も返さなくていいのだろうか。
悩んだ挙句、私の知りうる母について少し伝えようと思った。それが25年想っていてくれた佐倉さんへの礼儀なのではないか。

【先日は申し訳ありませんでした。母の気持ちは本当のことはもう誰にもわかりません。ですが想い続けて下さった佐倉さんへの気持ちに少しですが応えたいと思いました。母はひとりで私を産み育てました。戸籍にも父親はいません。それが原因で家族には絶縁されたため、とても苦労して育ててくれました。ただ、いつも私を産んだことに後悔はないと言ってくれ笑顔を絶やさない人でした。些細なことも喜べる人でした。そういえば、大学の頃に良く食べに行ったたこ焼きの話を何度となく聞いていたのを思い出しました。 そんな母が病気だと気がついた時にはすでに進行しており、手術もできない状況になっていました。懸命に生きようと努力しましたが治療の甲斐なく他界してしまいました。 私がお伝えできることはこれ以上ありません】

送信ボタンを押すとすぐに既読が付いた。
私はスマホを机に置くと母の遺影の前で手を合わせた。

ねぇ、あの人がお母さんの恋人だったのかな?
返事は返ってこないが写真はいつもより微笑んでいるように見えた。
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