悪役令嬢、モブ目指します!〜最短ルートを突き進もうとした結果、溺愛が止まりません〜
「トリニティ様……!」
「…………へ!?」
「僕の挨拶、どうでしたか?」
「ああ、うん……! とても良かったわ」
「ありがとうございます!」

パァと瞳を輝かせたダリルは満面の笑みを浮かべながら頬にそっと口付けた。
その一瞬の出来事に口がポカンと開いていたが、キャーッという黄色い悲鳴を聞いて現実に引き戻された。
デュランはヒューっと冷やかすように口笛を吹いた。
ご機嫌に手を振りながら去って行くダリルを見て思っていた。

(まさか年下男子に振り回される日が来ようとは……)
若さというのは恐ろしいもので、必死のアピールは止まる所を知らない。
縁側でのんびりとお茶を飲んでいる気分でいる此方に向かって、ダリルは心臓が跳ね上がるような事を平気でやってくるのだ。
「ここまで惚れ込んでるんだから婚約してやれよ?」
「満更でもないんだろう?」というデュランの言葉は、最近は耳が痛い。
「姉上の好きにさせてください、腹黒兄弟」とコンラッドは庇ってくれるが、トリニティの気持ちには薄々勘付いているのだろう。
ケリーもデュランと同じようにダリルとの婚約を勧めてくる。
相変わらずケリーはずっと側にいて、リュートもダリルの側にいる。

ケリーとリュートは良い関係ではあるが、恋人同士のような甘い雰囲気ではない。
最近、リュートのある言葉が気掛かりだった。
『思い出さないようにしているのではないか』
どうやらケリーの記憶の枷には『トリニティ』が居るらしく、リュート曰く『トリニティが幸せになれば、ケリーが満足するのではないか』と仮説を立てていた。
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