悪役令嬢、モブ目指します!〜最短ルートを突き進もうとした結果、溺愛が止まりません〜
「デュラン……」
「どうしてそんなに庇い立てるんだ、トリニティ」
「だって……ローラはとても良い子じゃない?」
「そうだな」
「なら少しは……」
「はぁ……」
溜息を吐かれてしまえば、これ以上ローラを勧めるわけにもいかずに押し黙る。
デュランはいつもダリルの幸せばかりを考えている。
けれどデュラン自身の幸せはどこにあるのだろうかと問いかけたくなる。
それに令嬢達との交流はあるものの、婚約や結婚にも消極的である。
その事が気になっていた。
「貴方は婚約者も作らないから……」
「ああ、別に欲しいとは思わねぇ」
「……でも」
「ダリルが幸せなら、それでいい」
「…………」
デュランは表情ひとつ変えずに答えた。
周囲に何も悟らせないようにするのだ。
それに全てを持っているように見えて、何一つ持っていない。
デュランしか分からない何かを理解することはとても難しいような気がした。
「何か出来ることがあったら協力するわ。わたくしが、いつでも相談にのるから」
「……」
「デュラン……?」
ピタリとデュランの手が止まる。
紙を渡そうとするが、一向に受け取ってもらえない書類に首を傾げた。
「こんなに良い女だって知っていたら、あの時に婚約を受けておけば良かったな……」
「え…………?」
深い海のような瞳と目があった。
困ったように笑うデュランに何て言葉を返せばいいか分からなかった。