悪役令嬢、モブ目指します!〜最短ルートを突き進もうとした結果、溺愛が止まりません〜
ダリルの気を逸らそうと、用意していた刺繍を施したハンカチを目の前に押し付けるようにして渡す。
トリニティの瞳の色のグレーの生地に、金色と青色の刺繍糸で王家の家紋を刺繍したのだ。
何故かイザベラが生地も糸も全て用意した状態で渡してきた。
そして言われるがままにハンカチに刺繍をしたのだった。

「…………」
「……えっと」

ダリルの気を逸らすことには成功したが、ハンカチをじっと見ている彼の姿にハッとする。
(もしかして気に入らなかった? それとも少し手抜きをしたのがバレた? でもケリーも『ハンカチ!? いやーん、素敵です! ハンカチ、絶対絶対にいいですよぉ!』と言っていたし、大丈夫だと思うんだけど……)
誕生日パーティーに呼ばれておいて、ダリルにプレゼントをあげるという思考すら無かった為、イザベラに言われて急いで刺繍したハンカチの刺繍はお世辞にも完璧とはいえない。
ダリルの後ろには山のように、高級そうな箱が積み上がっているのをみて、こんな事なら、もう少し頑張れば良かったと思わずにはいられなかった。

「あの……すみません。これしか用意していなくて」
「っ、とても嬉しいです」
「……!?」

興奮しているのかダリルはバッと顔を上げてから此方を見る。
あまりの勢いにびっくりして一歩後ろに下がるがダリルの手が伸びてきて、いつの間にか抱きしめられていた。
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