聖女様と老執事
スピネルは、教会に売られた子供だったと本人から聞いた。金貨を握りしめた両親は、スピネルのことなんて振り返ることもなく足取り軽く去っていったと言う。
いくら死んでも代わりはいるからと死の森に送り込まれて私のところに来た。
当時はまだ十歳くらいだったろうか。
私のことを「尊い聖女様」だと言い、尊敬の眼差しを常に向けられて居た堪れない気持ちになった。
金髪碧眼の少年だったスピネルは、何のために生きているのかすら忘れた私にとって触れてはいけないくらい無垢で輝いていた。
そんな彼は、一定時間この死の森の館から離れると死ぬ呪いを掛けられている。掛けたのはもちろん教会だ。
こんな教会はクソだと思うし、神様なんていたとしても人を救ってくれるとも思えない。
今まで私の世話係で来た人たちは、死の森での生活に恐怖して逃げ出し魔物に食べられたり、真っ黒な湖に身を投げてしまったり、館で首を吊る人さえいた。
そんな中、スピネルはいつも私に笑顔を向けて私の側にいてくれているのだ。