双子ママですが、別れたはずの御曹司に深愛で娶られました
 瞬間、心臓が震えた。彼の目から視線を外した方がいいと頭の中で警鐘を鳴らすも、とうに手遅れで私は雄吾さんから意識を吸い込まれる。
「最重要事項は、僕が君をまだ愛していると伝えること」
 雄吾さんは私の両目を覗き込んで、はっきりと言った。
『まだ愛している』という言葉に驚き、胸が早鐘のように鳴り続ける。
「ごめん。あの男が春奈のそばにいるのだけは、どうしても耐え難い。理由は......今ここでは話さないけれど」
 なにか奥歯にものが挟まった言い方で濁され、引っかかる。
 あの男って、海斗だよね? 雄吾さんが誰かをそんな風に敬遠するのはめずらしい気がする。それとも、この二年間で変わってしまった? 肩書きもついに社長になったみたいだし、環境が変わって冷やかな一面も出てきたとか......。
 困惑しながらも頭の中で忙しなく考えていると、雄吾さんに両肩を掴まれる。びっくりして顔を上げると、彼は情熱的な瞳を見せていた。
「あの日、君が言っていた荷の重さを僕は今なら請け負える自信がある」
 それは、別れを切り出した時に口から突いて出た方便。
 けれども、まったくの嘘でもなかった。
「私は......あなたに負担をかけたくはなかった。それは今も変わらない」
 私は彼をまっすぐ見て頑として答える。すると、雄吾さんは驚いた顔を見せ、その直後一笑した。
「ああ。そうだった。君はとても強い人だったね」
 僅かに顔を横に向けてクスッと笑う姿に、ふいにドキリとする。
 彼は「そうか」と独り言のように呟き、なにかに気づいた素振りを見せる。そして、怜悧な双眼が私を捕らえるや否や核心をつかれる。
「もしかして、君がすべて背負ってくれようとして急に別れを切り出した? 政略結婚と考えたなら、僕が拒否しても会社に影響する可能性が浮かぶだろうし。なにより尚吾の犠牲の上に立つ幸せを君が受け入れるはずがない」
 聡明な彼の見解に舌を巻く。
 どうしてよりにもよって、ここでその頭脳明晰さを発揮するの。
 彼の予想はほぼ合っている。唯一足りないとすれば、彼との子どもを身ごもっていたため、雄吾さんのご両親と私とで板挟みになる事態を懸念していたことくらい。
 それだけは、言い当てられてはいけない。婚外子がいたとわかれば、さすがに雄吾さんだって戸惑って重荷に感じるもの。
< 100 / 119 >

この作品をシェア

pagetop