双子ママですが、別れたはずの御曹司に深愛で娶られました
「もう、戻れないじゃないですか」
 下睫毛にかろうじてとどまる涙の粒が、彼に抱きしめられた衝撃で簡単に頬に流れる。
 懐かしい温もりの中で、私は為す術なく泣いた。
「戻らなくていい。今、ここからまた一緒に歩き出せばいい」
 彼はとても優しく私を包み込んでくれていたが、声が掠れている。
「雄吾さんは許せるんですか? 私、勝手に勘違いした挙句、ひとりですべてを決めて一方的に別れを告げて逃げて」
 私は子どもを産まないでほしいと周囲に言われるのが怖くて、雄吾さんを頼ることもせず、ひとりで......。
「許すもなにも、初めから怒っていないし、君だって好きでひとりで悩んだわけじゃないはずだ。それに、逃げたのはお互い様だろう」
 彼の瞳が微かに濡れている。
 それを目の当たりにした瞬間、これまで以上の罪悪感に駆られた。
「いいえ。許されません。私には、か――」
「旦那さんには俺が話をつけるから。春奈が俺を選んでくれるなら、なんだってする」
 私に最後まで言わせずに強引に話を被せられる。雄吾さんが必死になっているのを感じ、ふと思い出した。
 そういえば、さっきから雄吾さんは自分のことを『俺』って言っていた気がする。彼が自分をそう呼ぶ時は、余裕がない証拠だった。
 私はそれを知っている。覚えている。
「ごめんなさい」
 私はもう後悔でいっぱいになり、謝罪がこぼれ落ちる。彼のジャケットを必死に掴みながら、嗚咽交じりに言葉を重ねた。
「海斗は......弟です。本当は私、結婚なんかしたことないです」
「えっ? で、でもさっき『自分には海斗がいる』って言おうとしてたんじゃ」
「あっ、あれは『家族を守る義務が』って言おうと......子どもたちのことで」
 平謝りしたところで、許される嘘ではなかった。本当、自分で自分が嫌になる。
 私は両手を身体の前で揃え、礼儀正しく一礼しながら改めて謝る。
「咄嗟とはいえ私、身勝手な嘘をつい、て」
 彼の大きな手が、するりと両頬に絡みつく。そうしてゆっくりと上を向かされ、彼ともうひとたび向き合った瞬間、驚愕した。
 彼の目尻から涙がこぼれ落ちている。
「本当は死ぬほど後悔していた。物分かりのいいふりをして、君を手放したことを」
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