双子ママですが、別れたはずの御曹司に深愛で娶られました
 頬、耳、手、そして首筋。ゆっくりと私の思考を溶かすみたいに、妖艶に流し目でこちらを見ながらキスをし続ける。
 ふわふわした心地で彼に委ねていたら、ブラウスのボタンは外されていく感覚で、はっと我に返った。
「あ! ま、待って!」
 慌てて声をあげ、上半身を半分起こす。その時にはもう、雄吾さんは動かずに固まっていた。私の腹部の傷を見て。
 私は思わずブラウスで傷を隠した。
 この傷は出産時に負ったもの。双生児の出産だったため、帝王切開となっていた。さすがに一年半経った現在、痛みはほとんどない。しかし、見た目は元通りとはいかない。
 私ひとり生活している分には、全然気にならなかった。穂貴と詩穂へのリスクが軽くなるならなんてことはない、と納得していたものだったから。
 だけど、こういうのは特に男性には痛々しく見えて嫌かもしれない。
「ごめんなさい......やっぱり驚くよね」
 気まずい気持ちで伝えた瞬間。
「......えっ」
 思わず声を漏らして雄吾さんを凝視した。
 雄吾さんが涙をこぼしている――。
 なにが起きているのかわからず茫然としていると、彼は私の傷にそっと手を触れた。
「謝る必要なんてない。むしろ......僕が......本当にごめん。ひとりで苦しませて」
「そんな。それは私が」
「痛みに耐えながら、一生懸命ふたりを育ててくれていたんだって目に浮かぶ。一番大変な時に支えてあげられなくて本当にすまない」
 私は項垂れる雄吾さんの旋毛を見つめ、ふわっとした髪の毛に手を伸ばす。
「泣かないで」
 ひと声かけると、おもむろに彼の顔がこちらを向いた。悲しげに濡れている瞳を覗き込み、お願いをする。
「キス、して」
 彼が吸い寄せられるように唇を寄せるのに合わせ、私は彼のキスを迎えにいく。
 奥まで繋がり合いながら、私は指を絡ませている手を強く握った。
「っは、あ、深......んッ」
 私の身体をベッドに沈ませる彼の重みが、愛おしい。
 その夜、波打つシーツの中で私たちは数えきれないほどのキスを交わした。

 そして年が明け、一月の終わり頃に私たちは雄吾さんのマンションへ引っ越し、一緒に暮らし始めた。
 私は予定通り円満退職をし、穂貴と詩穂の保育園にも挨拶をしてきた。しばらく私は専業主婦として、育児に専念できる環境になる。
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