双子ママですが、別れたはずの御曹司に深愛で娶られました
 楢崎さんがドアを開けると、カランとドアチャイムの音がした。楢崎さんにエスコートされ、店内に入る。
「いらっしゃいませ」
 レジカウンターとパントリーにいたスタッフが笑顔で声をかけてくれた。
 ちらっと店内を窺うと、テーブル席が四席とカウンター席が少しあるくらいの、アットホームな空気感だった。暖色系の照明に照らされる濃いめナチュラルブラウンの木目調テーブルは年季が入っていて艶がある。そんなところもまた、なぜか懐かしい心象になった。
 レジ前にいた先客のおじいさんは、スタッフに親しげに挨拶をするとなにもオーダーせず、レジに小銭だけを置く。それから、途中のブックスタンドからスポーツ新聞を抜き取り、奥のカウンター席へと着いた。どうやら常連さんのようだ。
 ここも私がアルバイトしていたお店と同様に、まずレジでオーダーを受けるんだ。外見や雑誌に載っていた写真から、てっきりテーブルでオーダーするものだと思っていた。
「ご注文がお決まりになりましたら、こちらからどうぞ」
「古関さん、決まりましたか?」
「あっ、はい」
 女性スタッフの声かけで、私たちはレジへと歩み寄る。カウンターの上にあるメニュー表を一度みたけれど、気持ちは変わらない。前々からここに来た時には、まずカフェラテをオーダーしたいと思っていたから。
 私はメニュー表から視線を上げ、スタッフにオーダーする。
「ホットカフェラテをひとつお願いします」
「それと、キリマンジャロブレンドをひとつ」
 続けて楢崎さんがオーダーし、会計をしようとする。私は慌ててバッグからお財布を握って出した。
「支払いは自分で......」
「今日ここに誘ったのは僕だから。ごちそうさせて」
 にっこりと笑って言われると、それ以降なにも返せなくなる。ましてレジ前でスタッフも近くにいる状況だと、食い下がるのもどうかと思い、ひとまずここは引く判断をした。
「どこの席でもいいみたい。窓際に行きましょうか?」
「はい」
 楢崎さん主導のもと、入口右手の窓際のふたり掛けの席に決め、革張りのソファに腰を下ろす。ボックス席なので対面して座るのは当然だ。しかし私は、なんだかまともに彼の顔を見られなくて、なにげなく窓へ目をやった。
 格子のアーチ窓がまた可愛い。この席から窓の外を眺めると、景色の感じ方が違って感じるから不思議。
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